「高齢運転者標識の装着は義務?違反の際の罰則は?」
近年、高速道路の逆走やアクセルとブレーキの踏み間違いなど、高齢者ドライバーによる交通トラブルや事故が社会問題化しています。
加齢とともに、身体的能力や判断力、運転技術などが衰えていくのは仕方のないことでしょう。
しかし、重大事故を起こしてしまっては取り返しのつかないことになります。
なんとか、痛ましい交通事故を防ぐために私たちができることはないのでしょうか?
高齢運転者標識とは?
4色に色分けされた、四つ葉のクローバーをモチーフにしたマークをつけている自動車を見たことがある人もいるでしょう。
これは、正式名称を「高齢運転者標識」といい、70歳以上のドライバーが普通自動車を運転する際は、自動車の前面と後面にそれぞれ装着・表示するように努めなければいけないものです。
運転免許証を取得して1年未満のドライバーが装着する「初心運転者標識」は、一般的に「初心者マーク」や「若葉(わかば)マーク」と呼ばれています。
それに対比して、高齢運転者標識が以前の水滴のような形の2色のデザインの頃は、「もみじマーク」や「枯れ葉マーク」、「シルバーマーク」などと呼ばれ、あまりいいイメージを持たれなかったのですが、2011(平成23)年に現在のデザインに変更されています。
高齢運転者標識の装着は義務ではない!?
高齢運転者標識は、もともとは1997(平成9)年の改正道路交通法で「75歳以上の高齢運転者を対象とした努力義務規定」として導入されました。
その後、2002年(平成14)には対象年齢が70歳以上に引き下げられ、2007(平成19)年の改正道路交通法で、75歳以上への装着・表示の義務づけが決まりました。
しかし、2009(平成21)年の改正では、70歳以上75歳未満の者と同様に当分の間、努力義務にとどめることとされています。
道路交通法
第71条の5(初心運転者標識等の表示義務)
3.第85条第1項若しくは第2項又は第86条第1項若しくは第2項の規定により普通自動車を運転することができる免許(以下「普通自動車対応免許」という。)を受けた者で75歳以上のものは、内閣府令で定めるところにより普通自動車の前面及び後面に内閣府令で定める様式の標識を付けないで普通自動車を運転してはならない。
4.普通自動車対応免許を受けた者で70歳以上75歳未満のものは、加齢に伴つて生ずる身体の機能の低下が自動車の運転に影響を及ぼすおそれがあるときは、内閣府令で定めるところにより普通自動車の前面及び後面に内閣府令で定める様式の標識を付けて普通自動車を運転するように努めなければならない。
道路交通法附則
第22条(高齢運転者標識表示義務に関する当面の措置)
第71条の5第3項の規定は、当分の間、適用しない。この場合において、同条第4項中「70歳以上75歳未満」とあるのは、「70歳以上」とする。
以上より、現状では高齢運転者標識の装着・表示は義務ではなく、努力目標になっているということです。
高齢運転者標識の目的とは?
そもそも、高齢運転者標識は何のために装着・表示するのかといえば、周囲への注意喚起という目的があります。
周囲のドライバーは、高齢運転者標識のある自動車が安全に通行できるように注意し、配慮しなければいけません。
危険防止のためやむを得ない場合を除き、高齢運転者標識をつけた自動車に幅寄せや割込みをした者は処罰されます(道路交通法第71条5の4等)
・罰金:5万円以下
・反則金:大型自動車・中型自動車等は7000円
普通自動車・自動二輪車は6000円
小型特殊自動車は5000円
75歳以上の人口の約3人に1人が免許保有者
超少子高齢化の進展ため、日本の総人口に占める高齢者人口の割合は年々増加しています。
同時に、高齢の運転免許保有者も年々増加しています。
2016(平成28)年の統計データでは、運転免許保有者の約8221万人中、75歳以上の免許保有者数は約513万人(75歳以上の人口の約3人に1人の割合)となっており、警察庁の推計では、2022(令和3)年には約613万人にまで増加すると推測されています。
また、交通事故件数、死者数、負傷者数ともに年々減少しているにもかかわらず、高齢者が関わる事故は増加しているという現実もあります。
高齢者と交通事故については法律改正なども含め、新たな対策が必要な時期にきているといえるでしょう。
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